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ランドクルーザー300 GRスポーツのハイブリッド車は、モーターの緻密な低速制御により厳しい悪路で高い走破性を示した。
トヨタ「ランドクルーザー300」にハイブリッド車が加わった。愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」でGRスポーツを試したところ、電動化は走破性を弱める要素ではなく、低速での力強さと扱いやすさを高めていた。
ランドクルーザーは300、250、新型FJのいずれも、2026年10月上旬時点でトヨタの納期案内が販売店への問い合わせを求める状態にある。一方で国内登録は7月にシリーズ全体で約8000台、8月に約5500台に達し、車種別順位でも7位となった。供給台数が極端に少ないのではなく、世界的な需要が大きい。
開発担当者によると、再再販された70は年8万台を生産しても余裕がない。70の約9割、300の約7割は海外向けで、主に国内のトヨタとトヨタ車体の工場から輸出される。250は中国・成都でも「プラド」として生産され、70にはケニアとポルトガルの組立工場がある。円安下で収益性の高い海外需要が強く、国内向けだけを優先するのは難しい。
70は現在生産を休止。250は4月の改良時にガソリン車のみ発売され、人気の2.8リットル直噴ディーゼルターボ車は2026年12月以降の発売予定とされる。販売停止には法規対応などが関係しているとみられる。
300は9月の改良で装備と車種構成を変更した。V6ツインターボのハイブリッドを追加し、純ガソリンのV6ツインターボを廃止。ハイブリッドは7人乗りのZXとGRスポーツ、V6ディーゼルターボは5人乗りのZX、GRスポーツ、新設GXとなり、従来のAXとVXは廃止された。
価格はディーゼルのGRスポーツが915万900円、ハイブリッドのGRスポーツが1020万300円。2021年の発売時はGRスポーツがディーゼル800万円、ガソリンV6ツインターボ770万円だった。新しいディーゼルGXは一部装備を省きつつ前後の電動デフロックを備え、630万800円に抑えたが、今回の試乗会では展示のみだった。
ハイブリッドGRスポーツの試乗は、岩場と起伏を組み合わせたコースに限られた。システムはレクサスLX700hと基本を共用し、3.5リットルV6ツインターボが最高出力408PS、最大トルク650N・mを発生。54PS、290N・mのモータージェネレーターを加え、システム全体で457PS、790N・mとなる。
トヨタの一般的な2モーター式ではなく、エンジンとローレンジ付き10速ATのトルクコンバーター間にクラッチと1基のモーターを挟む並列式だ。大型ピックアップ「タンドラ」などにも使われ、けん引にも対応する。エンジンのみ、モーターのみ、双方を組み合わせた走行が可能となる。
過酷な地域での利用を考え、12Vスターターとオルタネーターも残し、駆動用電池の防水対策を施した。ハイブリッド系に不具合が起きても、内燃機関車として帰還できる冗長性を重視した設計だという。
マルチテレインセレクトの設定によっては、ほぼモーターだけで、アクセルをわずかに操作しながら岩場を低速で進めた。悪路では速さより、はうような速度で確実に駆動力を出す能力が重要となる。モーターは滑らかに大きな力を立ち上げ、車体を着実に前進させた。
ハイブリッド車は電動パワーステアリングを新採用した。従来の油圧と電動アクチュエーターを組み合わせた方式に比べ、岩からの反力が運転者へ伝わりにくい。泥で深く掘れた急斜面の曲がり角でも、標準装着のM+Sタイヤのまま、操作した方向へ安定して上った。
緻密なトラクション制御は、車輪が空転しやすい場所で駆動力を確保し、車内に大きな緊張を感じさせない。テスト車は全長4965mm、全幅1990mm、全高1935mm、ホイールベース2850mm、車重2690kg。WLTC燃費は9.4km/Lで、車両価格1020万300円、ヒッチメンバー装着の試乗車価格は1027万7300円だった。
限られたオフロード試乗ではあったが、電動化とランドクルーザーが求める耐久性、悪路から帰還する能力が両立されていた。世界各地で需要が続く理由を、低速域の扱いやすさと走破力の双方から確認できる仕上がりだった。
車種構成の整理には、厳格化する通過騒音規制など継続生産車への法規対応も影響する。基本思想を長く変えないランドクルーザーでも、販売を続けるための仕様変更は避けられない。300のハイブリッド追加は環境対応に加え、最上位にふさわしい出力を与える改良でもある。
新設のGXは豪華装備より悪路で使う道具としての機能を重視する層を想定する。前後デフロックを残しながら価格を抑え、1000万円を超えたハイブリッドGRスポーツとは別の役割を担う。
試乗した岩場では、モーターのトルクを単に大きく出すのではなく、タイヤが路面をつかめる範囲へ細かく配る制御が効いた。アクセルを深く踏まずに進めるため姿勢変化を予測しやすく、岩や溝を越える操作に余裕が生まれた。
電動パワーステアリングは路面からの不意な反力を抑えた。荒れた場所で腕を取られにくく、泥で深く掘れた曲がり角でも狙った方向を保ち、車体の大きさを意識させにくかった。
並列式ハイブリッドは一般的な乗用車の燃費最優先の仕組みとは目的が異なる。10速ATとローレンジ、けん引能力を維持し、モーターを発進と低速走行に使う。スターターとオルタネーターを残す設計も、故障時に移動不能となる危険を減らす思想に沿う。
車体は大きく重いが、試乗中の室内は路面の険しさに比べて穏やかだった。足回り、駆動制御、操舵系が一体となり、衝撃と空転を抑える。走破を特別な技量だけに依存させない点も、業務からレジャーまで世界で使われる車には重要となる。
今回は市街地や高速道路を走っておらず、日常域の燃費、乗り心地、加速感までは評価できない。それでも電動化で低速悪路性能を損なわず、むしろ操作しやすくしたことは確認できた。
海外向け比率が高い300は、砂漠、山岳、泥濘、長距離移動など地域ごとに異なる条件で使われる。電池や制御系の保護と、内燃機関だけでも移動できる備えは、燃費性能とは別の信頼性を確保するためのものだ。
標準装着タイヤのまま厳しいコースを通過できたことも、特別な改造を前提としない完成車としての能力を示した。車輪の接地を保つ機構と電子制御が働き、運転者は速度と進路の管理に集中できた。
登録台数が多いのに納期が見通しにくい状況は、国内での人気だけでなく輸出需要と生産配分の問題でもある。価格上昇後も注文が集中する背景には、代替しにくい耐久性と走破性への評価がある。
H.Takahashi--JT