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政府が存在を否定する自衛隊「別班」について、元公務員は冷戦後の士気低下と人的情報活動の成果を証言した。
小泉進次郎防衛相は2026年7月28日の記者会見で、ドラマ「VIVANT」で注目された自衛隊の「別班」について、過去にも現在にも存在しないと述べた。一方、防衛相経験者の石破茂氏は2023年の週刊文春インタビューで存在すると答えており、説明は食い違っている。
別班員と交流があったとする元公務員A氏によると、構成員は全員幹部自衛官だったが、昇進は2等陸佐までに事実上限られた。秘密任務のため家族にも仕事を明かせず、公に評価される機会も乏しかったという。
年にほぼ1回開かれる陸上幕僚長との懇親会を支えにする隊員もいた。防衛省近くの居酒屋の個室で会費制の酒席を設け、店員に身分を悟られないよう陸幕長を「社長」と呼び、互いをねぎらったとA氏は説明した。
不利な待遇があっても、隊員は仕事に誇りを持っていたという。一般の自衛官には通常認められない交際費を使い、海外の情報協力者との関係を築いた。冷戦下は北朝鮮、中国、ソ連への警戒が強く、衛星やサイバーによる収集技術も現在ほど進んでいなかったため、人的情報の価値が高かった。
冷戦終結で任務環境は変わった。米国から次の脅威は国際テロ組織アルカイダだと示されても、日本国内の活動対象は限られた。オウム真理教事件では自衛官の中に信者がいたことが情報保全上の問題となり、別班員に信者がいたわけではないものの、自衛隊全体の情報管理能力への不信から公安機関との関係も悪化したとA氏は語る。
士気が低下し、防衛相直轄で秘密漏えいや外部からの不審な接触に対応する自衛隊情報保全隊との役割分担も曖昧になった。不満を持つ関係者の一部が内部告発し、混乱が起きたという。
A氏らの証言では、別班は2006年7月5日に北朝鮮が計7発の弾道ミサイルを発射した際、大きな成果を上げた。米軍は衛星などでミサイルの種類と発射地点を把握していたが、別班が人的情報で得た内容が米側の情報と一致し、米軍から極めて高い評価を受けたとされる。
現在も組織があるかを問われると、A氏は明言しなかった。記事は、小泉氏が過去と現在の双方を否定した表現について、非公然組織の過去を認められない一方、すでに役割を終えた可能性を示すのではないかと推測している。これは筆者の見立てであり、政府が認めた説明ではない。
政府は情報機能の再編を進め、2026年7月31日に国家情報会議と事務局の国家情報局を発足させた。来年度中の設置を目指し、国外情報を専門に集める「対外情報庁」とも呼ばれる新組織も検討している。
新組織の任務には別班の活動と重なる部分が想定される。仮に別班が存在していたとしても、制度化された対外情報機関へ機能が移る可能性があるが、組織の現状を裏づける公的資料は示されていない。
A氏の話では、秘密を守るための待遇上の制約と、任務を公表できないことが隊員の昇進や士気に影響した。通常の部隊経歴として評価しにくく、成果があっても本人や家族へ説明できない構造だった。
衛星画像や通信傍受が発達しても、現地の人間が知る道路の状態や組織内部の意図など、人的情報でしか得にくい内容は残る。2006年のミサイル情報に関する証言は、技術情報と人から得た情報を照合する価値を示す例として紹介された。
ただし別班の存在、活動実績、現在の状態について政府は認めていない。国家情報局や検討中の対外情報組織との関係も推測の段階で、証言と公的事実を区別する必要がある。
K.Yoshida--JT