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『刑務所の文章教室』は、大塚敦子が執筆した本であり、彼女の著書『さよなら エルマおばあさん』や盲導犬の話、猫の話など、文学的な物語を扱った作品である。
『刑務所の文章教室』は、大塚敦子が執筆した本であり、彼女の著書『さよなら エルマおばあさん』や盲導犬の話、猫の話など、文学的な物語を扱った作品である。本書では、大塚敦子が刑務所で開いた「心のライティング」の講座が紹介されている。この講座は、刑務所の訓練生(受刑者)たちに、自分の気持ちや経験を言語化して共有するための活動である。講座の参加者は、島根あさひセンターと美祢センターで行われ、その参加者は20代から40代の男性5人、22歳から24歳の女性5人であった。彼らは、罪状として窃盗、家にも学校にも居場所がなく風俗の世界に足を踏み入れ、違法薬物に手を出した、別れ話のあげく「彼女を助手席に乗せて運転中(中略)車内でつかみ合いの争いになり、ハンドル操作を誤って壁に激突」し、彼女を死なせてしまったなど、さまざまな経験を持つ人々であった。
講座では、参加者に「いまの気持ちを色にたとえたら?」や「自分の人生を食べ物(料理)にたとえたら?」といった課題を与え、その思いや考えをそのまま書かせ、他の参加者と共有するように促した。その結果、参加者は自分の気持ちや人生を表現し、物語の後日談を書くようになる。本書では、谷川俊太郎やブッシュ孝子の詩、シルヴァスタインの『おおきな木』やバンサンの『アンジュール ある犬の物語』などの絵本、またモーパッサンの「首飾り」などが取り上げられ、参加者たちの感想や物語の後日談が紹介されている。
受講者の反応や答えや創作が、思い切りストレートだったり、いじけていたり、妙に素直だったり、ぶっ飛んでいたり、うなってしまうほど面白かったりする。このプログラムでは、絵本に刺激されての創作や、参加者同士のやりとりが、はっとさせるものが多く、絵本そのものの可能性についても考えさせてくれる。また、この体験はかけがえのないものとして記憶に残るだろう。本書は「罰ではなく、自らを回復させ、自他を傷つけない生き方を選択できるようになるためのサポート」の実践記録であり、随所に得がたい発見がある。それだけでも貴重な一冊なのだが、この本の存在そのものが、痛烈な社会批判になっているところが、ある意味切なく、また素晴らしい。おおつかあつこ/ジャーナリスト、ノンフィクション作家。『さよなら エルマおばあさん』で2001年講談社出版文化賞絵本賞、小学館児童出版文化賞受賞。『保護ねこものがたり』など著書多数。かねはらみずひと/1954年、岡山県生まれ。翻訳家。法政大学名誉教授。『日本文学の翻訳者たち』など著書多数。刑務所の文章教室――言葉が心をほどくとき 大塚敦子 紀伊國屋書店 2026年7月10日 発売 Amazonで購入する
H.Nakamura--JT