AEX
-1.6800
何が届くか分からない「福袋おせち」が通販市場で大きな人気を集めている。楽天市場の週間売上ランキングで上位を独占し、5年間で売上額が約33倍に膨らんだ。物価高が続く中、消費者は質と量の安心感に加え、高額商品が当たるかもしれないワクワク感を求めている。
何が届くか分からない「福袋おせち」が通販市場で大きな人気を集めている。楽天市場のおせち週間売上ランキング(10月26日~11月1日集計)では、首位と2位を独占し、関連商品の売上額も過去5年間で約33倍に急拡大した。
最新のランキングで首位となっているのは、大阪のスカイネットが運営する「海鮮かに処」の福袋おせちだ。令和元年に約3000個の販売から始まったこの商品は、その後Yahoo!ショッピングやAmazonなどにも販路を広げ、令和7年には年間販売数が10万個を突破。累計では35万個超に達している。
価格は1万2345円(送料無料)。二段重や三段重など56種類のうちどれが届くかは不明だが、数量限定のため昨年は12月中旬ごろに受け付けを締め切った。一覧を見ると、京都の料亭「岩元」監修の2万7800円のものや、カラスミやイクラなどを詰め合わせた5万2000円のものなど、高級感のある定番品が目立つ。有名シェフ・林裕人さんが監修し、ロブスターや祝い鯛、キャビアなどの高級食材を盛り込んだ109品目約60人前のセット(通常価格で70万円相当)が届く可能性もある。前回の最高額当選者は神奈川県の男性で、60万円相当のおせちを受け取った。
なぜ早割よりもお得感のある価格設定が可能なのか。同社担当の但馬なつみさんは「キャンセル品の活用や数量調整が目的で、さほど利益を見込んでいない」と明かす。物価高の今、但馬さんは「質と量が担保される安心感に加え、高額商品が当たるかもしれないワクワク感があるのが支持されている理由だろう」と分析する。
ランキング2位となっているのは、愛知の食品会社「千賀屋」の「千賀屋の冷蔵おせち福袋」だ。創業55年の料亭の味を継承し、価格は1万1155円(送料無料)。13種類のうちどれかが届き、どれも通常価格よりお得感がある。正統派の和風おせちが中心だが、和洋中を取りそろえたお重や、フグや牛肉を添えた10万円相当の豪華版も用意されている。
販売促進部の是枝史浩さんは「物価上昇の影響があっても、おせち料理で新年を迎えたいという思いはある。一方で、できるだけお得に購入したいというネット通販の消費者心理と合致したのではないか」と指摘する。福袋展開には「より多くのお客さまに味や品質を試していただき、来年の購入につなげる機会にしたい」という意図もある。
楽天グループのECコンサルティング部・田村有基さんは、「今年の福袋おせちは取扱数が前年の41アイテムから約2.6倍の107アイテムへと増えた。関心の高まりがうかがえる」と語る。今ではおせち全体の約5分の1を福袋おせちが占める。
Yahoo!ショッピングのおせち特集担当者は、人気の背景に「キーワードの親和性がある」と指摘する。福袋の先行予約が定着し秋口に検索数が増えることに加え、おせち商戦で定番となった「早割」が検索ワードとして強力な相乗効果を生んでいると分析する。
福袋研究家の米倉勝巳さんは、福袋おせちが「これまでおせちを買う習慣がなかった新たな客層が興味を持つきっかけになっている」と話す。人気がある価格帯は1万円台で、「2~3万円程度のおせちの購入をためらうような人が宝くじ感覚で買っているのだろう」と分析する。「身近な食品だからこそ、お得感を実感しやすく、『当たりが出た』という評判が会話やSNSで広がりやすい」とも指摘する。
購入額を上回る安心感、高額当選への期待感、そして秋冬トレンドを捉えた言葉のインパクトの強さ。福袋おせちには、物価高で価格に敏感なコスパ志向が加速する今、ヒットする理由が凝縮されている。
M.Matsumoto--JT