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漫画家の柏葉比呂樹氏が「小隊 REVENGE 2」で北海道の市街戦を描く意図と制作上の工夫を説明した。
コミカライズ版 『小隊』 (原作・砂川文次 漫画・柏葉比呂樹)の続編が刊行された。 『小隊 REVENGE 2』 は、元自衛官の芥川賞作家、砂川文次さんが新たにオリジナル原作を執筆。リアルな戦場描写が連載中から話題となり、発売前に早くも重版が決定した。北海道をめぐるロシア軍と自衛隊の攻防は、いよいよ市街戦へと突入する。北海道出身で、作画を担当された柏葉比呂樹さんに、続編の狙いを巡ってお聞きした。
大ヒットの背景にある世界情勢
──コミック版『小隊』が9刷、累計3万5000部超(電子版含む)の大ヒットとなりました。この反響を巡って、あらためて感想をお聞かせください。
柏葉 本当にありがとうございます。多くの方にこの作品を手に取っていただけた事を純粋に嬉しいと思います。と同時に、やはりその背景にはロシアのウクライナ侵攻をはじめとした昨今の緊張した世界情勢があると思うと、身が引き締まる思いです。
──今回、続編の作画を決断された心境を巡ってお聞かせください。
柏葉 僕自身、小説『小隊』のその先を、もう少しだけ知りたかったんです。主人公である安達3尉がロシア軍と戦闘になったのは釧路市の郊外でした。自衛隊が命を懸けて戦っている最前線を描いていても、〈戦場〉がまだどこか遠い場所のような気がしてたんです。
しかし、市街地が戦場になるかもしれないと想像した時、一気に身近な危機として迫ってきた。もしも自分がそこに住んでいたら、家族、友人はどうなるのか? あの交差点の陰から戦車が迫ってくるのか? 僕たちは一体どうなってしまうだろう? そして、安達のその後の運命はどうなっていくんだろう?
そこが純粋に知りたかった。原作を執筆していただいた砂川文次先生には完結している小説の続編とすることで相当悩まれ、ご無理をおかけしてしまったと、恐縮しております。
〈北海道に上陸したロシア軍との戦闘で、陸上自衛隊27連隊は壊滅。死地を脱した安達3尉だが、新たな任務をおびて戦地へと戻ることに。最前線の街・釧路は、自衛隊反乱部隊とロシア軍傭兵部隊らが対峙する〈無法地帯〉と化していた。壮絶な市街戦、逃げまどう市民たち。硝煙弾雨のなか、ロシア軍侵攻の真の〈目的〉が明らかになる〉
──続編を作画する際に、心掛けられたことがあれば、教えてください。
柏葉 作画とすることに焦点を絞るならば、最近SNSでこんな反応があったんです。現場活動されている自衛官たちは隊からの支給品の他に自前で装備品などを所持していて、それらを描き分けているともっとリアリティがあるとするご意見をいただきました。
たしかにその通りで、作品を始める際に砂川先生もその事を巡って話されていたんです。他にも、弾嚢やポーチなど各隊員によって使いやすい場所に装備していて個性があるとする話も伺いました。ただ、そこを巡ってはすみません(泣)、統一させてもらいました。
僕が間違えちゃうんですよ。複数の隊員を描いていると胸付近にあったはずのポーチが次のページでは腰に、なんてミスをしてしまう可能性が高くなる。それで全隊員装備統一とさせてもらった経緯があります。それでも、右肩に掛けていた鞄がいつの間にか左肩に、なんて事も多々あり、単行本を発売する前の修正では、いつも担当編集さんに怒られてます(泣)。
等身大の主人公を描きたい
── 主人公である安達3尉のキャラクターを作画するにあたり、心がけられた点などありましたらお聞かせください。
柏葉 自衛官は僕ら一般人からみたら、身体的にも戦闘に関してはやはり超人だと思うんです。それにマンガとするエンタメ要素が入ってくると、どうしても超人的な活躍をさせたくなる。その傾向が行き過ぎないように、ブレーキを掛けないといけないところでしょうか。人間としての安達に注視し続けないと、本質を見誤ってしまう危険があります。
──続編では安達の視点だけでなく、ワグネル兵の視点からも描かれています。その作画を巡って、心がけた点などありましたらお聞かせください。
柏葉 今回はロシア軍に加えてワグネル兵と民兵部隊が登場してます。彼らの装備を象徴化し、パッと見でそれらの見分けがつくように心がけました。本来であれば戦闘服も、ロシア軍やワグネル兵も迷彩柄を着用している可能性が高いと思うんです。しかし、それだと自衛隊と見分けがつけにくくなる。そこで、ロシア軍側は迷彩のない無地としてます。
もちろん、リアルとわかりやすさを同時に満たすことが最善ではあるのですが、専門用語も多く出てくる中で、ミリタリーに詳しくない方でもついてこられるように苦心しています。
──続編では自衛隊員だけでなく、保健師の南など女性キャラも登場します。その作画を巡って、心がけた点などありましたらお聞かせください。
柏葉 女性キャラ、難しいですよね……苦手なんです(笑)。原作では指定がなかったのでちょっと気の強そうな雰囲気も持っている、宮﨑あおいさんを参考にしました。似てるかなぁ……。
苦労した火災のシーン
──今回は釧路における戦いが主な舞台です。市街戦の描き方を巡って苦労した点などありましたら、お聞かせください。
柏葉 部隊や作戦の描写も苦労した点なのですが、いちばん悩んだのは〈火災〉です。砲撃や爆発で起きた火災は、街であっても車両であっても、鎮火するまでにはそれなりに時間がかかるはずなんです。
戦闘地域では、消防に関する人員も不足しているはず。ただ鎮火や消防の時間を正確に物語に落とし込むと物語の展開が渋滞してしまう。その落としどころを探すのに、苦労しています。
──ロシアによるウクライナ侵攻は4年以上が過ぎた現在も終わりません。ロシアの侵攻と本作との関連を巡って、北海道出身の漫画家として、思うところがあればお聞かせください。
シベリアに抑留されていた祖父
柏葉 僕の祖父はシベリアに抑留されていたんです。無事に帰ってくることができましたが、その時のことを巡って多くを語ることはありませんでした。祖父が亡くなった今、もっと話を聞いておけば良かったなと思います。どのようにして抑留され、戻ってこられたのか、当事者から語られる想いや当時の空気は時間と共にどうしても薄れていってしまうように思います。
終わりをみせないロシアの侵攻に対する不安とする空気が、筆を通して今作に反映されているのは間違いありません。〈今〉だけしか描けないかもしれない……そう思うと、改めて身が引き締まる思いです。
──続編を楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします。
柏葉 1巻では〈群〉として所属する部隊の指揮下で行動していた安達3尉が、市内への戦闘に移り戦況が激化し混乱をきたす中、〈個〉としての選択をより多く迫られるようになっていきます。自衛隊の〈群〉としての規律を体験していない自分にその心境や葛藤が果たして描ききれるのか……頑張ります!
1975年北海道生まれ。2007年、デビュー。著書に『映像ディレクター越智は見た 世界怪奇録』(原作・越智龍太)など。
小隊 REVENGE 2
砂川 文次 ,柏葉 比呂樹
2026年9月16日 発売
2025年3月21日 発売
T.Ikeda--JT