オーストリアの学術院研究:子育てを支える「選択された家族」の役割
オーストリア科学アカデミー(ÖAW)が実施した新たな調査は、子育てにおいて核家族だけでなく、友人や近隣住民による「水平ケア」が重要な役割を果たしていることを実証した。特に50代女性の負担が大きく、社会制度上の認識不足が浮き彫りになっている。
オーストリア科学アカデミー(ÖAW)が発表した最新の調査結果は、現代の子育て環境において「核家族」の概念が実態を捉えきれていないことを示している。同研究は、友人や近隣住民、兄弟姉妹などによる「水平ケア」——すなわち親世代や子世代ではない、同世代間での相互扶助——が子育ての31%を占めるという驚くべき事実を明らかにした。
この調査は、オーストリアにおける子育て支援ネットワークの実態を解明することを目的としている。従来の統計や社会通念では、子育ては主に両親によって行われるものと見なされがちだが、ÖAWの研究チームは、非公式なソーシャル・ネットワーキングが事実上の子育てインフラとして機能していることをデータで裏付けた。
調査結果によると、水平ケアの担い手の62%を女性が占めている。特に50代から59代の女性層にその傾向が顕著だ。ÖAWのイザベラ・ブーバー=エンサー氏は、オーストリアの新聞『Oberösterreichische Nachrichten』に対し、この現象について「自分自身の子育てにおける基本的な問題と似ている」と指摘した。「女性がより多くのケアを行う場合、男性はそれだけ少ない役割しか果たさない」という構造である。
ÖAWのカロリーネ・ベルクハマー氏は、メディアがこの結果を「驚くべき発見」として報じたことに対し、これは長年にわたる多くの人の現実を反映したものであり、必ずしも意外なものではないと説明する。オーストリアの価値観調査(1990年以降のデータ)によれば、「友人や知人が非常に重要である」と答える人の割合は過去数十年で約2倍に増加している。
この傾向は、結婚率の低下や「シングル社会」の台頭といった社会的変化と相関している。未婚のライフスタイルが公式統計で過小評価されがちになる中で、ÖAWの研究は、伝統的な家族モデルに依存しないケアの形態を可視化した。
研究は、水平ケアを「個人的な介護」「家事援助」「金銭的支援」「子育て」の4つの領域に分類している。特に子育てにおける非公式なサポートの割合が31%に達することは、アフリカの諺「村全体で子供を育てる(It takes a village)」の実践的な意義を再確認させるものだと研究チームは述べている。
しかし、この広範な支援ネットワークは、法的・政治的・経済的にほとんど認識されていない。友人が子供の迎えや食事の準備を行うなど、実質的な家族機能を果たしていても、公式統計や法制度では「家族」として扱われないのが現状だ。ÖAWのベアトリクス・フラスル氏は、著書『Entromantisiert Euch(脱ロマンチック化せよ)』において、友情が家父長制的規範によって後回しにされてきたと批判し、平面的な絆こそが人生を支える本質的なパートナーシップであると主張している。
研究は、現在のシステムが女性の不可視の労働に基づいていることを示唆している。ÖAWの分析によれば、男性が公平な割合でケアを担うことが「驚くべき結果」になるほど、現状では性別による役割分担が固定されているという。
ベルクハマー氏は、40時間労働の親二人が、政府のインフラ整備が不十分な中で子育てを行うには、周囲の広範な支援なしには不可能だと指摘する。この調査は、友人や近隣住民が法的には家族でなくても、実質的には「選択された家族」として機能していることを実証した点で、社会政策の見直しを促すものとなっている。
K.Nakajima--JT