松岡修造氏、現役最終戦に臨む錦織圭へエール
松岡修造氏が、現役最後の大会に臨む錦織圭の功績と期待を語った。
テニス男子の木下グループ・ジャパンオープンは30日、東京・有明テニスの森公園で開幕する。今大会が現役最終戦となる元世界ランキング4位の 錦織圭 (36=ユニクロ)に、11歳での出会いから四半世紀にわたってそばで見守り続けてきた 松岡修造 氏(58)が、現役中最後のメッセージを送った。
「引退」を前にした今大会は、錦織圭選手の生きざまを見られる大会になると予感している。ケガがなければ、彼はどんな相手に対しても、見る者の心を動かすプレーを見せると思う。元々持っているプレースタイル、他の選手にはできない遊び感覚のあるテニスや速い展開、錦織圭にしかできないテニスを披露してくれるだろう。
アスリートは、引退を決めるとモチベーションが上がる。終わりを決めたことで、迷いがなくなる。(現役生活に)リミットがあるからこその力が、試合の中にも出てくると思う。今大会も体が持ち、ゾーンに入っていけば、優勝してもおかしくない。なぜなら彼は(ケガで)休んでいる最中も、ネットプレーなど新しいものを取り入れて進化してきたからだ。彼自身、それを披露したい、やりたいと思っているのではないだろうか。僕も今まで見たことのない錦織圭のテニスを見られると期待している。
彼の最大の功績は、世界のテニスの流れを変えたことだ。同時期に活躍したビッグ4(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マリー)は、ネットプレーが得意だったフェデラーを除けば、ベースラインから相当後ろに立ち、守備からポイントを取っていくテニスだった。それを錦織選手は、ベースラインのほぼ真上に立ち、攻撃的に返した。しかもドロップショットなど、今で言う(4大大会通算7勝の)アルカラス的な感覚を取り入れた先駆者だった。ビッグ4やアルカラスをはじめ、みんなが彼から学び、憧れるテニスを生み出した。
僕も含めて、日本の選手に足りないことは、自立や決断する力だと思う。人から言われた通りにするとか、指示を受けて行動するのは日本人の良さでもあるけれど、テニスの試合では、それは通用しない。ただ、錦織選手は、1人で戦える人だった。11歳の時に出会い、ジュニアの頃から試合を見ている中で、それを感じていた。自分の力で困難を乗り越える力、扉を開く力を持っていた。1人で戦える力があるからこそ、崖っ縁を乗り越えたり、ファイナルセットでは世界で最も高い勝率を誇ったのだと思う。
そして、14年の全米オープンで、アジア男子初のグランドスラム決勝進出。世界ランキングは日本男子歴代最高の4位。16年のリオオリンピックでは銅メダル。数え上げればキリがないが、圭はそれまで日本人が見たことのなかった景色を何度も見せてくれた。圭が開いてくれた日本テニスの扉は、あまりにも大きい。
誤解を恐れず言えば、僕は引退後の錦織選手に、何かを求めるつもりはない。あれだけ過酷なツアーを回り、大事な人生の何十年間も全てを懸けてきた。家族との時間も含め、たくさんのものを犠牲にしてきたと思う。今度はこれまでできなかったことを、自分自身のためにやっていく人生にしてほしい。最も幸せな選択をしてもらいたいと願っている。
最後の試合が終わった時、どんな言葉を贈りたいと思うか、今は分からない。なぜなら錦織選手は必ず、何かを起こしてくれると分かっているから。もしかしたらプレーを見た後、「まだできる!」と言うかもしれない。だからこそ、最後の1球まで、錦織圭を見届けたい。
《1回戦は10月1日》錦織は10月1日に1回戦に出場する見通しになった。29日に発表された30日の1回戦の出場選手に、錦織の名がなかった。世界8位の強敵フランシス・ティアフォー(米国)との1回戦を控え、29日は会場でアーサー・フェリー(英国)と練習した。約6700人の観客が見守る中、好プレーでは拍手を誘い「昨日(28日)よりはいいプレーができていた。もう1日準備して、いい試合ができるようにしたい」と抱負を語った。
Y.Kimura--JT