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脳出血の後遺症で右半身にまひが残る記者が、障害者手帳アプリを使ったタクシー割引をめぐる運転手とのやり取りと、制度の周知が進んだ経緯を報告した。
脳出血の後遺症で右半身にまひが残り、杖を使って歩く記者は、雨天や疲労時、帰宅が遅くなった際に駅から自宅までタクシーを利用している。身体障害者手帳による1割引は、移動の負担を下げ、社会参加を支える制度だと受け止めている。
乗車時にはスマートフォンの障害者手帳アプリ「ミライロID」を提示する。右手が不自由なため、かばんから紙の手帳を出す際に車内で落とすことがあり、アプリの方が扱いやすいからだ。ミライロ社によると利用者は約70万人で、交通機関や博物館、美術館など4300を超える事業者が対応している。自治体によって形式が違う手帳を同社が審査するため、事業者側の確認負担を軽くする利点もある。
多くの運転手は丁寧に対応したが、アプリを知らず割引をためらう人もいた。記者はタクシー会社に事前確認し、アプリ画面だけで利用できるとの説明を受けていた。それでも2、3年前、ある運転手は「見たことがない」として対応を拒み、不正乗車の可能性まで口にした。
記者が会社に確認するよう求め、紙の手帳を出そうとすると、運転手は手帳を確認しないまま、自分が負担するわけではないという趣旨の言葉を述べて割引処理をした。記者は、正確な確認が目的なら原本を見るべきだったとして苦情を伝え、障害を理由に軽く扱われたのではないかとの疑念を抱いた。
一方で記者は、運転手が新しい仕組みを知らず、対応方法に戸惑った可能性も考えている。障害者割引には行政支援や地域ごとの制度があり、運用が複雑な場合もある。不正利用を防ぐ確認は必要だが、知識不足へのいら立ちが利用者への横柄な態度に変われば、新たな摩擦を生む。
事業者がアプリ対応を決めても、全スタッフへの周知には時間がかかる。中途障害者となった記者は、多くの配慮に感謝する一方、障害があるために軽視されたと感じる場面もあると説明する。納得できない場合に声を上げることは、制度を現場に定着させるためにも必要だとした。
同じ会社のタクシーで何度か似たやり取りを経験したものの、最近1年ほどはトラブルがないという。社内で周知が進み、運転手の間にもアプリの存在が浸透してきた可能性がある。記者は、新しい道具が定着するまでには時間が必要だが、当事者が経験を伝えることで改善が促されると結んでいる。
記者は、健康だった頃には想像しなかった種類の緊張が、障害者になってからの日常にあると記している。手助けを受ける場面が多い一方で、制度を利用しようとした時に疑いを向けられれば、外出そのものの心理的な負担も増す。怒りを抑えることもあれば、今回のように苦情を伝えることもあるという。
今回の出来事は最近起きたものではなく、アプリの普及がまだ十分でなかった時期の経験だった。その後に問題が減ったことから、記者は個々の運転手を一方的に責めるのではなく、会社による研修と情報共有、利用者からの説明が重なって現場が変わった可能性を指摘する。紙の手帳とデジタル証明のどちらでも、利用者の尊厳を損なわずに確認できる運用が必要だとしている。
割引を「得」と見る声に対して、記者は、身体が不自由な人には移動のための追加負担があり、制度はその差を少し小さくするものだと説明する。アプリは手帳の代替表示だけでなく、障害者が外出先で必要な支援へアクセスしやすくする役割を持つ。利用可能と決めた事業者には、現場で迷いが生じない手順の整備も求められる。
K.Abe--JT