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水野美紀は大手事務所独立後の舞台経験を土台に、テレビ復帰後は「奪い愛、冬」などの怪演とコメディーで新たな評価を得た。
映画「踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!」に出演する水野美紀(52)は、1990年代の清楚なヒロイン像から、強い個性を持つ役やコメディーまで演じる俳優へ活動の幅を広げてきた。新作では、捜査本部を率いる新米管理官の母となった雪乃を演じる。
1974年生まれの水野は、1992年の化粧品CMやゲーム「ストリートファイターII」の春麗に扮したCMで注目された。1994年にバーニングプロダクションへ移り、1997年の連続ドラマ「踊る大捜査線」で本格的にブレイク。2001年の「女子アナ。」で連ドラ初主演を果たし、2002年にも「初体験」「しあわせのシッポ」で主演した。
転機は2002年の劇団☆新感線の舞台出演だった。映像で培った演技の感覚が舞台では通用しないことに刺激を受け、舞台で力を磨くため2005年に大手事務所から独立した。当時は独立した俳優がテレビや大作映画の仕事を失うことが珍しくなく、水野もテレビ出演が減少。「踊る」劇場版第3作には出演せず、第4作への登場も限定的だった。
2011年、園子温監督の映画「恋の罪」で大胆なヌードと性描写を含む役に挑戦し、映画界で注目を集めた。その後テレビ出演も徐々に戻り、2017年の鈴木おさむ脚本「奪い愛、冬」が再評価の大きな契機となった。クローゼットから笑いながら現れる場面など、舞台で培った熱量を生かした演技が話題となり、作品はシリーズ化された。
その後も「M 愛すべき人がいて」「離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―」などで個性の強い人物を演じた。一方、2016年のバカリズム脚本「黒い十人の女」では、本妻と9人の愛人を巡る物語の中で、愛人同士を引き合わせる舞台俳優役をコミカルに表現した。
新しい「踊る大捜査線」でも、雪乃は頼りない管理官となった息子を心配し、捜査会議へ乗り込む役回りを担う。長年の舞台経験と、怪演やコメディーで開いた現在の水野の持ち味が、1997年から変化した雪乃像と重なる構成となっている。
独立当時は、大手事務所を離れた俳優がテレビや大作映画の仕事を失うことも少なくなかった。水野は出演機会が減ることを承知で舞台へ軸足を移し、映像とは異なる発声、身体表現、舞台上の熱量を蓄えた。
雪乃は「踊る大捜査線」に欠かせない人物だったが、2010年の劇場版第3作には登場せず、2012年の第4作で復帰しても出番は少なかった。主人公の青島と直接絡む場面もなかった。
「奪い愛、冬」のクローゼット場面は、本来なら恐怖を生む演出だったが、水野の笑顔と高笑いが狂気と笑いを同時に生み、ネット上で広く話題になった。本人は後年、舞台で培ったものをもっと出そうと考えたと説明している。
反響を受け「奪い愛」は複数作品が作られ、水野はシリーズを象徴する出演者となった。誇張した表現と現実感の両方が必要な場面で、舞台経験が生かされた。
「黒い十人の女」では、愛人同士を引き合わせる行動、退屈な劇団公演、本妻からカフェラテを何杯も浴びせられる場面などを、表情や動きまで含めて笑いへ変えた。
新作の雪乃は若い頃のヒロイン的な位置から、捜査会議をかき回す母親でありコメディーの担い手へ変化した。俳優本人の歩みと役の年月が重なる構成になっている。
K.Tanaka--JT